トイレトレーニングが定着していたのにも関わらず、急に愛犬がおもらしをするようになったら・・・!?今回はしつけというよりは、体の生理的反応や、病気の可能性などから「おもらし」についてフォーカスし、原因と対処法についてお伝えしてまいります。

犬の排尿をつかさどるもの
「尿を出すかどうか」については。犬の脳が決めています。通常は脳からの指令を受け、体がそれに反応し排尿に至るのですが、なんらかの原因により、脳への指令がうまくいかず、尿が出るのに時間がかかったり、おしっこをした後にも尿道がなかなかすぐに閉まらずにポタポタと垂れたり、寝ているときに気づかないところでおもらししてしまうことがあります。
つまり、自分の脳ではコントロールできない状態での排尿をおもらし(失禁)と言います。では、具体的にどういったものがあるのでしょうか。ここからは具体的な例3選見ていきましょう。
子犬のうれション

飼い主さんが帰宅したときや来客時に思わず興奮して漏らしてしまう、うれション、というのは良く聞きますね。実際にうれションをしてしまう犬は多く、特に、1歳未満の仔犬に見られるのが特徴です。この行動のメカニズムとしては、普段は尿道が筋肉(尿道括約筋)によって締め付けられているので閉じた状態にあり膀胱からおしっこが外に漏れ出ないようになっています。しかし、子犬の場合ではこの機能が未発達。そのため興奮するとすぐに筋肉が緩みおもらししてしまうことがよくあります。
このときの犬の気持ちは「嬉しい」、「興奮」、「怖い」、「びっくりしている」、「服従している」といういくつかの感情がない混ぜになり、結果として自分の意志とは関係なく排尿してしまうものです。これは俗にうれションと呼ばれていますが、ここで叱っても意味のないことは言うまでもありません。対処としては興奮させないことが基本です。つまり、これを早期にやめさせるためには人の対応が大事だということですね。
成犬では病気の可能性も

尿の回数が増えた。元気そうに見える犬でも、この症状が見られる場合は何かの病気のサインであることもあります。膀胱炎、肝臓病、糖尿病などは代表的なものですね。丁寧に色や回数をチェックしてみてください。またこれとは別に、やはり無意識のうちに排尿しているようなケースがあります。例えば椎間板ヘルニアなどによるものがそれにあたりますので、好発犬種に限らずおもらしが見られたら、何かの病気の可能性があるかもしれませんので注意が必要です。
老化によるもの

歳を重ねるに従いあちらこちらが不自由になるのは、人も犬も自然なことです。目や耳の衰えだけではなく、排尿をつかさどる脳の機能もまた同じように衰えてきます。トイレではない場所での排尿。意思はあるもののトイレまでたどり着けずに途中で排尿してしまうなどが見られます。シニア犬で尿道や膀胱に炎症があると、ちょっとした刺激でおもらしをしやすくなりますので早期治療が必要です。
避妊、去勢手術の後遺症

症例はそう多くないのですが、こうした可能性も無いとは言えないので念のため記載します。
避妊手術(子宮卵巣切除術)を行ったメス犬の数パーセントに尿失禁がみられるという調査結果があります。尿失禁を発症するのは手術直後の場合も、また、2~4年ほど経過してからの場合もあるようです。そのため飼主さんは原因がずいぶん前に行った避妊手術によるものだとは考えに至らないことが多く、そのほとんどが「わざと、トイレではない場所でおしっこをして嫌がらせをしている」という心理的なものだと決めつけてしまうことが一般的なようです。
しかし、可能性としてこうしたデータがあることを覚えておいてください。その上でやはり獣医師に相談されるのがよろしいでしょう。
まとめ

いかがでしたか。犬のおもらしはしつけによるものだと思い込みがちですが、実は見過ごせない原因が潜んでいることもあります。兆候が見られたら早めに獣医師に相談をするのがベターと言えます。「わざとおもらししている」と決めつけて叱る前に、愛犬の体になにか変化が起きていないか、どんな気持ちだったのか、という面から見つめてあげることで、愛犬の健やかな毎日をサポートしたいですね。
Write by YUKARI IWAI