1970年代の日本では、中型以上の犬は、屋外に繋いで飼う動物でした。しかし時代の変化と共に犬の室内飼いは増え続け、現在においては犬を屋外で飼う世帯は少数派です。犬の屋外飼育については、人により様々な意見があるということを踏まえつつ、今回はそうした環境が犬の寿命にどのような影響をもたらすのかを、ご一緒に見てまいりましょう。
「外飼い」とは
ときは令和。すでに「外飼い」というワードすらよく分からないとおっしゃる方も見えるはずです。「外飼い」とひと口にいってもその飼い方は様々。今回の記事の中では、寝起きをはじめ、生活のおよそすべての時間を庭や玄関先など、屋外で過ごす犬の飼育方法を「外飼い」と位置づけ、お話を進めてまいります。
外飼いをすることでまねくケガや病気
犬を外飼いすることで、以下の病気やケガにかかりやすいと言われています。
以下にプラスして、幼い頃からの外飼いは、社会化不足や、家族との関係性、無駄吠えの要素を作り出します。
・ノミ、ダニなどの寄生虫
・暑さによる熱中症
・寒さによる体調不良、感染症
・脱走による交通事故
・犬同士のケンカによる咬傷
・いたずらにより投げ込まれたエサが引き起こす中毒
・皮膚病の悪化
・望まない妊娠
・早期の痴呆症
・いたずらによるケガ
ただしこれらは一例です。日よけの屋根があるか、クサリ等で繋がれているか、予防薬の服用をしているか、避妊手術をうけさせているか、など、それぞれの環境に左右される事例であることを念のためお伝えしておきます。
外飼いは寿命に影響する?
2019年に、あるペット保険会社が行った調査によると、この10年間で犬は平均で+0.7歳ほど寿命が延びていることがわかりました。これは、人の寿命に換算すると約4~5歳分となるので飛躍的な進歩だと思いませんか。
犬の寿命が延びたのにはいくつかの要素がありますが、その一つに、外飼いが減り室内飼いが増えたといったものがあります。外飼いによる傷病リスクが、室内飼いをすることで回避できたからです。このことから、外飼いが寿命に及ぼす影響がある、と言えますね。
外飼いという飼育環境
外飼いをすることで生じるトラブル、傷病の原因となるものを例としていくつかあげてみました。どれをとっても犬に良い環境ではありませんので、絶対にやってはいけないNGな飼い方と言えるでしょう。
・ロープ、クサリ等で繋ぎっぱなし(係留)
・雨、風、日差し等、悪天候から身を守るための屋根がない
・多湿気、多乾燥、等、空調が悪い
・掃除の行き届いていない不潔な小屋
・散歩、排泄に連れ出さない
・フェンス、檻が頑丈ではなく、スペースが狭い
・飼主の目が届かなく、孤独にさせる
・騒音下や、通行者から安易に手が届く
・高見台や独立した小屋などが無い
ルールの無い日本
残念なことに、日本ではこうした犬の飼い方を規制する法律やルールがありません。しかし、動物愛護の国として有名な北欧のスウェーデンでは、犬の飼育ルールが動物保護法により明確に定められています。
例えば、犬の係留は長くても2時間まで。他に、一定の柵の高さや飼育スペースの大きさなど詳細が決まっている上、通報があれば動物検査官が現場に行き、違反者には罰が課せられます。たとえ外で飼われていても規則的に運動を与える必要があるという一文も法律に記されている徹底ぶりです。
まとめ
犬にとって良くない環境とは、不快、不安、不潔、孤独を指します。こうした飼い方を避け、環境エンリッチメントを整えて暮らすことが飼育の基本であり、ストレスフルな飼育環境は犬の寿命にまで関わるということですね。
最後に個人的な補足になりますが、「外飼い」という環境要素だけが犬の寿命を縮めるのかというと、私はそうでもないと思っています。と言ってしまうと、少しだけ語弊があるでしょうか。
その理由は、外飼いであってもきちんと飼主さんから四六時中目が届き、まさに家族の一員として幸せに暮らしている犬がいるからです。日本で飼育される犬たちの多くは小型犬や日本の気候にふさわしくない犬種がほとんどですが、中には外で飼育するのに適した種類、サイズ、性格を持っている犬がいることも忘れないでください。
大切なのは、外飼い、室内飼いという区分けだけではなく、飼主さんがどれくらい真剣に犬の体調管理や心に気を配っているかや、どれほど深く愛しながら犬を想って共に暮らしていくか、ではないでしょうか。
Write by Yukari Iwai