さて、みなさまのおネコ様は、冬支度も本番というところでございましょうか。拙宅のにゃんずは相変わらず、ごはんを食べて、寝て、じゃれて、寝て、仕事の邪魔をして、寝て…そして、また寝て、の繰り返しでございます。いつもと変わらぬにゃんずを見ていると、せわしい気持ちもほんの少しばかり、やわらぎます。これこそ、にゃんずがもたらす「ほっこり効果」でございます。
「お気に入りパーツ」はありますか
見ているだけで幸せになれる
さて、愛猫家には、それぞれお気に入りの「パーツ」があるかと思います。ふたりのにゃんずと暮らす私も、それぞれにお気に入りパーツがございます。
ふたりのうち、ひとりは9歳の女の子・イールー。彼女はとても小柄で、足が短く、鼻ぺちゃなのですが、ぬいぐるみのように可愛らしいにゃんこです。黒豆のような肉球も大好きですが、何より彼女の「下くちびる」がとてつもなく愛らしいのです。暇さえあれば、猫画像を眺めてほくそえんでいる私ですが、イールーほど明確に「下くちびる」があるにゃんこは、めったにおりません。思い切り触れてみたいのですが、場所が場所なので、そうそう気楽に手を出せずにおります。触れることはままなりませんが、日々、愛でて愛でて愛でまくっている親バカな飼い主でございます。
もうひとりは1歳の男の子・ギジー。5㎏のがっしりとした体格を持つギジーは、スラリと伸びた足、スーッと通った鼻筋、あずき色の肉厚な肉球、と「イケメン」の構成要素満載でございます。もちろん、すべて愛してやまないのですが、とくに気に入っているのは、彼の「かぎしっぽ」です。「かぎしっぽ」とは、しっぽの先が折れている、曲がっているしっぽのことです。ギジーの場合は、折れ具合が控えめではありますが、れっきとしたかぎしっぽです。
私は、かぎしっぽのにゃんこと暮らすのはギジーが初めてで、友人たちのにゃんずにも、かぎしっぽはいません。私にとっては稀な形なのですが、このかぎしっぽにゃんこがたくさんいる地域があるのです。それは長崎県です。少し、かぎしっぽについて、調べてみました。
かぎしっぽは幸せを招く
「尾曲がり猫」とも呼ばれるかぎしっぽのにゃんこは、日本全国での平均生息率は41.7%ですが、長崎県は79.0%だとか 。なぜ、長崎県に多いのでしょうか。どうやら、話は江戸時代まで遡るようです。当時、ネズミ対策のために、貿易船には猫を乗せて航海していたと言われています。長崎の出島は、江戸時代で唯一の海外貿易港だったので、インドネシアから入港した貿易船に乗っていた「尾曲がり猫」たちが、上陸したのではないかと言われています。
このかぎしっぽには「幸福を引っ掛けてくれる」という逸話があります。中国では「幸福の扉を開けてくれる鍵」と言われているそうでございます。
「しっぽ」の先までも…
しっぽが曲がってしまう原因は、「遺伝」という先天的なものと、事故による後天的なものとがあるといえます。「遺伝」には、3つの遺伝子[平松1] が関係していると言われていますが、それについては、またの機会に触れるとしましょう。一方、後天的にしっぽが曲がってしまったというのは、幼い頃に踏まれたとか、高いところから落下したなど、なんらかの理由でしっぽにダメージを受けたケースが考えられます。
ギジーの場合は、わが家に来た時にはすでにかぎしっぽでした。保護してくれた方からも、しっぽにダメージを受けたという話は聞いていないので、先天的なものかもしれません。生まれてすぐに母猫に押しつぶされた、という可能性もなきにしもあらずですが。
ところで、にゃんこのしっぽの骨は「尾椎」という骨で構成されていますが、その数は18~20個とバラつきがあります。しっぽの長さに個体差があるので、それも当然といえば当然の話ですね。「マンクス」という猫種のようにしっぽが極端に短いにゃんこの場合の骨は、4個ほどしかないそうです。
「しっぽの骨」で思い出すのは、かつて16年間一緒に暮らしたにゃんこを、空に見送ったときのことです。火葬後、葬儀屋さんがにゃんこの焼骨を骨格どおりにきれいに整え、きちんと「どの部分の骨か」を説明してくださったのです。しっぽの長い子でしたので、尾椎は20個近くあったと思います。しっぽの先にいくほど小さくなっていくのですが、その小さな小さな骨も、とても丁寧に扱っていただいて、涙を流しながら感激したのを覚えております。
それぞれの子によって、一番のお気に入りパーツはありますが、やはり、頭の先からしっぽの先まで、すべてが愛おしい…。それが愛猫家の愛猫家たる所以でございましょう。
Write by Gin Nekoyama